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2020年8月~11月

親の相談室(登校刺激をどういうふうにすればいいの)2020.11.29


 こどもが学校を休み始めた。明日は行くというので今日だけということで休ませたが,1週間も休んでいる。こどもに理由を聞くが,友だちのことを言ったかと思うと勉強が分からいと言う。先生も嫌いだと言う。こどもが言うことがころころと変わる。本当の理由は分からない。休む理由づけを考えているようす。毎日がこどもとのバトルになっている。

 学校への欠席の連絡もしんどくなった。心療内科に行くと休ませるように言われているが,学校の先生は「登校すれば元気にやっている。」ので,なんとかして登校させほしいと言われる。

 親が頑張ってこどもを登校させると,先生から「学校では楽しく元気にやっていました。」と連絡が入るが,こどもが帰宅してから家では大暴れをする。行き渋っているこどもを学校に行かせることには疲れ果てている。

 親として,どうすればいいのか迷ってしまうことでしょう。どうすればいいのか分からないときは,こどもに身体症状があるかどうかで判断しましょうか。熱がある,頭が痛い,お腹が痛い。一旦学校を休ませると,また休むかもしれない,引きこもるかもしれないと不安になりますが,体に症状があるなら無理をさせずにもう休ませましょう。

 あと一般的なことでいえば,定型通りに発達しているこどもでは,多少の不登校が続いても「家の中を落ち着いた環境に整えておけば,あとは待てばいい。」と考えています。本人がその気になれば,それこそたまごが割れるように登校することになります。

 また発達に課題があるかもしれないと思われるこどもの場合では,適度に登校刺激をかけることが必要でしょう。なにもしないといつまでも登校しません。ちょっとずつ背中を押すという感じがいいのではないでしょうか。徐々に登校をし始めることができればいいと考えています。

 30代や40代になってから再び引きこもるよりも,親子ともども焦らず今の不登校の経験が将来に生かせるように,休んでいる間に上手に充電しておくことが,長い目でみればとても大事なことになってきます。登校刺激に力を注ぐよりも,家庭内での安全や安心感などの環境作りに力を注ぐことが望まれます。

親の相談室(こどもがなんでも親が悪いと攻撃してくる)2020.11.21 


 子育て中に親がしんどくなることの一つに,「こどもがなんでも親が悪いと攻撃してくる。」ことです。学校や友だち間で嫌なことがあれば,親がこんなことを友だちに言ったのでこうなったと責めてきます。

 たいがいは,「なかよくしてね。」など他愛のない親の言葉掛けなのですが,そこを突っ込んできて責めたててきます。それを聞いた親は,何をいうのとあきれます。腹が立ちます。親も本気になってこどもを怒り,大変なバトルに発展していきます。

 不登校状態にあるこどもそうですが,こんな状態にあるのは親のせいと言います。親の育て方にまで突っ込んできます。中には,「どうして自分を生んだ。」とまで言うこどもも出てきます。
 もちろん親はこどもの意見に全否定しますが,あまりのこどもの攻撃のすごさに,親は圧倒されて「いらん子やった。」ととんでもないことも言ってしまいます。親子共々考えられないほど傷ついてしまいます。

 どうして,こどもはこんなことを言うのでしょうか。大切で大好きな親に,このしんどさを分かって欲しくて,甘えてしまうのでしょう。こどもは,自分の思いを,体を張って親に聴いてもらおうとしています。しかし,こどもの言葉を聞いた親はもう驚くばかりです。

 ではどうすればいいのでしょうか。こどもの思いや意見を聴き切ることです。そんなことはできない,こどもが間違っているのだから,こどもを正す必要があると思われるかもしれません。
 しかし,大人の力でこどもを打ち負かせば,そのうちこどもが反撃してきます。こじつけて下手に言い返してしまうと,ますます泥沼バトルが続くことになります。

 こどもが繰り返して「自分の思い」を出し切ると,すると,こんなことを言ってしまったけど自分も悪かったと振り返りを始めます。思っていたことを言って親に聴いてもられたと感じると,こども自身の「心が浄化」されて,本人の内省が始まってくるわけです。

 余裕があるときに,是非ちょっと我慢して「こどもの思い」を聴いてみてください。本当にしんどいことですが,こどもの目つきが和らぐかもしれません。それを繰り返していくうちに,こどものようすが徐々に変わっていくことでしょう。

親の相談室(こどもが引きこもる部屋の壁に穴があいている)2020.11.8


 こどもが,家族と一緒にご飯を食べない。食事は部屋の前に置くだけ,入ることもできない。ときどき怒鳴り声も聞こえる。ドスンという音がする,壁に穴があいている。こどもが突然に不登校になって,そのまま引きこもって荒れている。

 引きこもりの相談はとても多いです。きっかけは,友だち,学校の先生,親の関わり,親の学校不信,こども自身の不安や意思,原因はなくてなんとなくなどさまざまです。小学校,中学校,高校を休んで,会社を辞めて,期間も数日から数年などと,開始時期やその期間もさまざまでしょう。

 こどもが引きこもったとき,もっともしんどい思いをされるのは母親が多く,一番の被害者ともいわれています。長時間かかわっている家族もしかりです。引きこもっているこどもと一緒に過ごすことは大変です。こどもの勢いに圧倒されて,腫れ物に触るようになってしまいます。しようがないとあきらめも出てきます。

 逆に,そんなこどもの気持ちはどうでしょうか。こんなときに思い出すのが,「破壊的権利付与」という言葉です。心理学的な専門用語ですが,分かりやすくいうと「自分はこんなにしんどい思いをしているので,破壊的に荒れて無茶をしていい権利を与えられている。」という意味です。そんな状況にあるこどもが思ってしまいやすい心境です。そして荒れる多くのこどもたちも思いがちな心境でもあります。

 こどもをこんな視点で考えてみると,そんなこどもへの見方ががらりと変わってくることがあります。こども本人も,しんどくて悲鳴をあげている状態です。本人も大変です。親と同様にいつまでもこんな状態ではいけないと考えています。機会を見て,動き出したいと思っています。

 いつもそうですが,卵が割れるように,本人がその気になって,突然動き出すことがあります。あとでこども本人に当時の心境を聴いてみると,「病気じゃなかったので,もっとそっとしておいて欲しかった。」という言葉が聴けることがあります。

親の相談室(大事な人がいなくなるかもしれないと不安がる)2020.10.30


 こどもにとって,もっとも恐ろしいことは親がいなくなることはないでしょうか。親に元気がないと,それだけでもこどもは不安になります。その親がいなくなるなんて,こどもには信じられないほどの恐怖でしょう。
 祖父母が,同級生が,大好きな人や大事な人がいなくなるかもしれないなど,いろいろと不安があります。このことを対象喪失の不安と言います。不安がるこどもには,こどもの不安や思いを聴くことが大事になるでしょう。

 教育委員会で相談業務に関わっていると,学校からこどもの父か母が亡くなったという情報がしばしば入ってきます。不慮の事故でなくなったときなどは特にそうです。また親の自死もそうです。こどもが第一発見者のときもあります。
 考えただけで,ぞっとするほど悲しくて辛くなります。学校の先生方も,こどもの気持ちや将来のことを考えると不安になります。

 こんなときは,スクールカウンセラーも関わることになりますが,学校は専門の相談機関とも連携を取って,こどもの心のケアに取り組んでいきます。相談機関も最優先してこどもや学校を支援します。大事な人がいなくなった不安や緊張感をできるだけ和らげることを願います。
 対象喪失の不安や悲しみを念頭に,ゆっくりと時間を掛けて喪の作業の援助をしていくことになります。

 ところで,東日本大震災の避難所で出会った対象喪失を経験したこどもや保護者のことをよく思い出します。自身の非力さを痛感し,何かをしなければならないと焦ったことを思い出します。
 辛いことが起こったときに残されたこどもや親には,「こうしたらいいよ」とかいう指示や「大丈夫や」などという提案は段階的にしていくことは悪くはないのですが,早期の段階では温かい心での「見守り」や「寄り添い」とか,本人が話し出せば聴くという「傾聴」の姿勢が大事ではないでしょうか。

 余談になりますが,自身が若いときに,中1の担任の男の子のお母さんが9月に癌で亡くなることがありました。そのお母さんは,7月の懇談会には来校されて,顔色は決してよくはなかったのですが,笑顔でお話をされていたのが印象的でした。
 亡くなったという連絡を受けてすぐに家に行ったのですが,お母さんのそばに,こども本人とお父さんが座っておられたことをよく覚えています。
 
 その男の子には,あと日々声をかけ気をかけていたのですが,その12月の二者懇談会で「お母さんの夢を見ることがあるの」と思い切って聞いてみたところ,「毎日夢に出てきはる」と応えてくれました。あとは泣いて懇談会を終えたのですが,その男の子はそれほどの辛い経験の真っ最中だったのですね。喪の作業を上手にしている最中だったのかもしれません。
 現在どんなに立派な大人になっているのだろうなあと会いたいと思うことがあります。

親の相談室(こどもを虐待していないか心配になる)2020.10.22


 こどもに手を出してしまった。大きな声で怒鳴りつけた。もうこんな子はいらない,育てられないと思った。こどもにイライラする。こどもが泣いて寝入ったあと,いつも空しく辛くて大泣きをする。大事なわが子なのに,そんなことを繰り返して,こどもの成長に悪い影響を与えてしまっているのかもしれない。それって,虐待になるの。

 実際に虐待をしている親は,虐待をしているという自覚はないといわれることが多いのですが,さまざまなような気がしています。それにしても,子育て中の大半の親は,大変です。こどもの成長を願って,一生懸命にこどもを育てています。時には厳しくすることもあり,それがしつけの範囲であるのか,虐待なのかと悩んでおられることもあるでしょう。

 しつけという大義名分のもと,執拗にあるいは過激に繰り返されたり,こどもが怪我をしたり,あざが残るようなことがあれば,児童虐待となってしまうことになります。

 児童虐待は,法的には,どのように分類されているのでしょうか。日本では「児童虐待の防止等に関する法律」において,次のように4つに定義されています。

 ①「身体的虐待」は,児童の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること。例えば,一方的に暴力を振る,食事を与えない,冬は戸外に締め出す,部屋に閉じ込める。

 ②「性的虐待」は,児童にわいせつ行為をすること、または児童を性的対象にすること。 例えば,子供への性的暴力。自らの性器を見せたり,性交を強要する。

 ③「ネグレク(育児放棄、監護放棄)」は,児童の心身の正常な発達を妨げるような減食,もしくは長時間の放置や監護を著しく怠ること。 例えば,病気になっても病院に受診させない,乳幼児を暑い日差しの当たる車内への放置,食事を与えない,下着など不潔なまま放置する。

 ④「心理的虐待」は,児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。心理的外傷は,児童の健全な発育を阻害し,場合によっては心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを起こす。例えば,言葉による暴力,一方的な恫喝,無視や拒否,自尊心を踏みにじる。

 テレビの報道等で話題になるのは,上記のような行為があるときですね。病院や学校,近所から通報が入り,児童相談所が警察等の関係機関と連携を取って対処することになります。

 親の交友関係が順調で孤立していなくても,子育てはプライベートな生活のこともあり,親本人だけで抱えること多くなりがちです。ママ友にも言えず,自分の親にも心配を掛けたくない,加害に父親や義父も関わっているなど,ひとりで抱えて悩み,重篤なうつ状態やパニック障害になってしまいます。
 最悪こどもにぶつけてしまうことにもなります。ますます,状況を悪くしてしまいます。思い切って,自分が信頼できると思う人を一人絞りこんで,相談することも大事でしょう。

 また,子育ての電話相談も多くあり,とても充実しています。専門の相談機関や児童相談所も守秘義務が確かであり,タイミングをみて思い切って相談をされてみてはいかがでしょうか。

親の相談室(こどもの学級が荒れて登校を渋る)2020.10.11


 学級が荒れていて,こどもが学校に行くのを渋っているが,どうすればいいのかと困っている。担任の先生には言いにくいし,校長先生にも,敷居が高くて言えない。教育委員会はもっと敷居が高い。こどもが安心して,登校してくれればいいのに。

 以前は中学校で学級崩壊が話題となっていました。ここ20年ぐらい前から,小学校の高学年でもこの崩壊が起こっていると話題になってきています。最近は,小学校の3.4年生でも問題となることがあります。

 この大きな問題にどこからアプローチしていけばいいのか迷ってしまいますが,根底には学校の先生の権威の低下ではないでしょうか。先生という「権力」だけでは,やっていけない時代に入っています。学歴も高く教育力を持った保護者に育てられたこどもたちには,命令口調で,とにかく「しなさい」という指示だけでは,通用しなくなってきています。
 先生には「こどもたちが理解し納得するまで説明する」という責任があります。この責任を先生が放棄したときに,担任不信や学校不信が起こってきます。
 
 学級が荒れると,学力の低下はもちろんのこと,こどもたちの心も荒廃してきます。こどもと先生の間の信頼感だけでなく,こども同士の信頼感も弱まってきます。学級には,モデルとなるべき先生が存在せず,こどもの間にも協力から対立関係が顕著になってきます。いじめは横行し,不登校の児童生徒も増えてきます。学級はサバイバル状態となっていきます。

 残念ながら,学級崩壊が起これば,すぐには元の状態に戻らないのが事実です。こどもと先生との人間関係の回復はとても難しいのです。新しい担任を期待するか,学年の変わり目まで待つ覚悟はいります。

 このような学級の状態でこどもが登校を渋れば,どうすればいいのでしょうか。もちろん学校の管理職や教育委員会の先生に相談し協力体制を作っていくことが大事です。 
 同時に,個人的な意見なのですが,こどもに「身体症状があれば,無理をしないでほしい。」といったところです。登校時に,こどもがお腹や頭が痛いとか,微熱があるようなら,是非学校を休ませてください。荒れた人間関係の中に,疲れたこどもを放りこんでも,決して元気になりません。よりひどく心の傷を負わないように「こどもを守ること」を最優先とすべきでしょう。

親の相談室(こどもが夜中に泣き叫ぶ)2020.10.1


 ひょっとすると,大人でも怖い夢を見て,夜中に大きい声を出すことがあります。大人は,ある程度は,見た夢を思い出して,この夢のこのことが原因だったなあと考えることができます。夢を見ていなくても,日常の不安が大きい声に結びついたのではないかと考えます。

 小学校入学前から小学校低学年までの頃に,こどもが夜中に泣き叫ぶことがあります。このことを夜驚症(やきょうしょう)いいます。どんな症状かといいますと,睡眠中に突然起き出し、叫び声をあげるなどの恐怖様症状を示します。概ね数分から十数分間症状が続くでしょうか。夢とは異なり目覚めた時に本人はそのことを覚えていないのが普通です。

 睡眠中枢が未成熟なために起こる症状であると考えられています。成長過程の一時的な症状であり,小学校の半ばぐらいには,自然と夜驚症は見られなくなります。高学年になっても,この症状が続くようでしたら,小児科を訪ねていただいてもいいかと思います。なお,似た症状を示すものでは、入眠時の幻覚、睡眠中の精神運動性てんかん発作などがあります。

 しかし,しばしばこどもが夜中に泣き叫ぶことがあれば,親もこどもも,心身とも疲れてしまいます。夜寝る前に少しでいいので,こどもと一緒に楽しい絵本を見たりして,くつろげる時間をつくることができれば,夜驚症はとても軽減できるでしょう。子供が安心できることを寝る前に習慣的に行うと効果的です。

親の相談室(こどもが何かが見えるという)2020.9.20


 こどもが,親には見えないのに虫がいると怖がる。「となりのととろ」の「まっくろくろすけ」のような黒い虫が見えるという。あるこどもは,霊のようなものが見えるという。変な物音や声が聞こえる。奇妙な人の気配がする。なぜか線香のにおいがする。こどものようすがおかしいと保護者の方が心配になって,相談に来られることがあります。

 夏になると,TVYou-Tubeなどでも,こういう内容が話題になります。人影やラップ音がVTRの記録に残っていたとか,体験談が組まれたりします。こういう番組を見ていると,しばしば鳥肌が立ちますし,トイレに行くのも怖くなります。
 しかし,あとよくよく考えてみると,番組は,気配やそういうふうに見えたのを演出しているかのように思えてくることがあります。
 しかしながら,実際はほとんどの人は,はっきりと幽霊は見たことはないし,気配はしたというぐらいのところではないでしょうか。

 では,実際は存在しないのに,その本人だけが見えたというのは,うそを言っているのでしょうか。いや,本人にはちゃんと見えて感じていることなのです。

 こどもが,ストレスや抱えていたり,とてもつらいことがあって,うつ状態であるときにも,一時的に何かが見えたり,被害妄想をいったりすることもあります。こういう症状のことを精神医学では,幻覚や幻視,幻聴,幻嗅,体感幻覚といいます。

 しかし,こういうこどもには,統合失調症の疑いがあるという診断がなされることがあります。この疾患の特徴は,思春期頃に比較的発症しやすい病気です。大きい病気の1つです。「脳の火災」とも言われています。幻覚と妄想を主な症状としており,早く消し止めるのが1番です。脳へのダメージが大きく,萎縮を起こし,機能低下に至ることになりかねないのです。
 何かが見える,何かが聞こえると,こどもが頻繁に言うようでしたら,少しでも早く受診することをおすすめします。

 もう一度,おさらいしてみると,こどもに「幻覚や妄想があること。そして,集中力を欠いて,作業的な能力の低下がみられること。今までと何か違った雰囲気をかもしだしていること。」などがあれば,統合失調症の可能性があります。

 霊的な感じ取りを統合失調症かもしれないと,ファンタジーをなくすようなことを言っていますが,病気かもしれないという視点も新たに持っていただいてもいいかと思っています。
 しかし,とても小さいこどもや犬猫などは,霊が本当に見えているのではないかと思うことがよくありますよね。

親の相談室(こどもがゲームを止めない)2020.9.12


 オンライン化でゲームが,ますます進化しています。また,世界的な規模で「eスポーツ」などの競技が行われており,職業化しつつあるようなゲームも現れてきています。 
 しかしながら,本来ゲームは,楽しむのであり人生の糧にもなりうるものですが,ゲームに没頭し,巻き込まれてしまうことも起こっています。ゲームに依存し,生活が乱れてしまうこどもも大人もが増えてきています。

 現実には,ゲームに依存しているこどもがいる家庭は,どんな状態になっているのでしょうか。思い浮かぶことは,こどもが部屋に引きこもっていることです。親子の交流も拒絶をしています。時には,こどもの部屋の壁に穴が開いています。食事も,こどもの部屋の前に置くだけです。
 最初から,そうではありません。不登校やいじめなどの経験や親子間のバトルなどが原因で,徐々にそうなっていったのでしょう。こどもも大変ですが,親も大変です。

 ところで,最近WHOでも話題になっていたのですが,ゲームで生活が乱れているこどもは,ゲーム依存症を意識します。「ゲーム脳」のようになっていて,ゲームに没頭し,ゲームに依存し,イライラして,キレやすくなっている状態にあることです。
 大人にあるよくあるアルコールやギャンブル,薬物などの依存症に近い状態です。この状態では,治療を必要とします。ゲーム依存症は,長期にわたる治療や対応することが必要となってきます。
 実際は,たいがいのこどもは治療まで必要になってくることはありませんが,どのこどももゲーム依存症になる可能性はあります。

 では,ゲームに熱中しているこどもがゲームに巻き込まれずに,依存症にならないようにするどうすればいいのでしょうか。ただ単にゲームを止めなさいとか,時間を決めてしなさいとかいう対応ではなく,こどもの将来や夢を考慮したゲームの約束事を家族でつくることでしょうか。
 ゲームを起因とする「イライラ」や「倦怠感」にも,親はしっかりとした「壁」になることが必要でしょう。こどもがゲームに没頭するきっかけとなったしんどさは何か,それと共に向き合うことなどが必要となってきます。

 今は,不登校と共に,ゲーム依存も,社会の深刻な問題となっています。コロナ禍にある今こそ,こどもを守るという意味でも,ゲームに振り回されているこどものしんどさに向き合うことが大事ではないでしょうか。

親の相談室(こどもがひどく痩せてきた)2020.9.5


 こどもが,ごはんを食べようとせずに,ひどく痩せてきた。最初は,普通にダイエットと思って,心配をしなかったが,十分に痩せてきたのに,まだまだ太っていると,食事制限をしている。ずっと,水とビスケットだけでは,病気にならないか心配である。そんなとき,摂食障害を疑います。

 思春期の女子に多く見られるダイエットですが,摂食障害にまですすんでいくことがあります。大きなストレスや心理的な要因,生物的な要素が関わると考えられています。
 ご存知かもしれませんが,生物的な要素とは,かつて人類が飢餓に備えて,体に脂肪を蓄える機能のことです。食事制限をしたあと,ほっとしていると,ますます食欲がわいてきます。ダイエットのあとのリバウンド現象などは,そんなことが影響しているのでしょう。摂食障害においても,拒食と過食を繰り返しやすいのが特徴です。

 拒食症では,食べたものを嘔吐してでも,体重を調整します。体重の数値だけを追い求めて,自身のもともと理想とした体形が見えなくなります。どんどん体重を減らそうとするわけで,そのうち命にも関わるような危険な状態も招きかねません。一般的には,標準体重の15%を切れば,摂食障害と言われます。155㎝ぐらいの身長でしたら,体重が30㎏前後で,拒食症の疑いが出てきそうです。
 しかし,重要なのは,体重がますます減りつつあるのか,戻りつつあるのかということです。もっと体重が減ることになれば,点滴などが必要になり,入院措置となります。

 親などの家族や友だちが,本人の顔や体形を見て,「ヤバイよ」と騒ぎ出せば,こども自身も,さすがに心配になってきます。
 こんなこどもは,親思いのこどもが多くて,周りには迷惑をかけまいと思っています。家族や友だちの前では,普通に食事をしても,あと密かにトイレで「もどす」こともしばしばあります。「もどしてはいけないこと」が分かっているのですが,止められないのです。嗜癖(しへき)や強迫症状に近いのかもしれません。
 精神科や心療内科の診察は,親子で相談できますので,思い切って病院に行ってもいいかと思います。あとカウンセリングをするのも効果はあります。

 親がこどもに「食べなさい。」と言っても,すぐには,普通に食べることはできません。親も「こどもが食べること」に執着しないことです。むしろ,こどものしんどい思いを理解し,不安定な精神面への支えとなることです。すぐには,症状が改善することはないので,長期にわたる周りの温かい対応がとても必要となってきます。

親の相談室(こどもが家出をする)2020.8.29


 こどもが,「こんな家や嫌や,家を出たい。」「私はいらん子や。」といつも言っている。親は親で,こどもの言葉に反応して,「そんな子はいつでも出て行ったらいい。」「いなくてせいせいする。」と言い返す。そんな会話が普通になされていることが案外あります。
 そんな話を聞くと,一瞬驚きますが,どれだけ本音を語っているのでしょうか。
 
 このような会話がなされていても,実際には,家出をしないことが多いのですが,突発的に,こどもが家を飛び出すことがあります。そうなれば,保護者の方は,大慌てで,警察や学校,児童相談所に連絡したり,保護者が知っているこどもの友だちに問い合わせたりします。

 専門機関で相談業務をしていると,家出経験のある大人やこどもと出会うことが結構あります。相談の合間に,過去の家出のようすや思いを聞く機会があります。家出の理由やきっかけは,家族への反発がほとんどですが、いろいろあります。大人もこどもも,そうです。
 
 余談になりますが,大人と子どもの家出先などに,どんな違いがあるでしょうか。大人の家出の方が,遠い場所に長期間に滞在することが多いです。家を出ることの覚悟や所持金の違いも影響しているのかもしれません。

 こどもの家出は,鉄道やバスを使って遠方に向かうこともありますが,お金がないので,近場の友だちの家を順繰り渡り歩くということが多いです。。結果として,友だちやその地域が,家出のこどもを守ることになります。時には,児童相談所に通所経験のあるこどもは,児童相談所の一時保護を願うこどももいます。

 しかし,体を張った家出も,長期となると,大人もこどもも,疲れてきて,早く家に帰りたいと願います。帰宅するには,きっかけが必要となってきます。早く帰りたくて仕方がないのですが,きっかけがなければ,なかなか家に帰ることができません。

 なによりも体裁のよい帰宅のきっかけは,「親や家族に自分を見つけてもらう。」ということです。大人もそうです。
 待ち切れずに,「犬に餌をあげるために家に帰ってきた。」などの理由づけをして,自ら帰宅することもありますが,親や家族が「家出をしているこどもを懸命に見つけ出して,家に連れ戻される。」という帰宅を熱望しています。

 心配していた親や家族は,帰宅したこどもを見た瞬間に,「怒り」と「安堵」の気持ちが交錯します。気持ちをコントロールしながら,どれだけ心配したかを伝えることが必要となってきます。同時に,こどもの思いを聴くことも,とても大切になります。
 こどもは,この瞬間にも親の愛情を計っています。これから長く続く親子関係のために,こんな対応がとても必要になってくるのではないでしょうか。 

親の相談室(こどもが頻繁に手を洗う)2020.8.20


 コロナウィルス感染防止のために,学校や病院,どんな店舗の入り口にも,除菌用のアルコール消毒液が設置されています。まとまった買い物をしようと,何件もお店を回っていると,消毒液で何回も手を洗うことになります。そんな日の夜は,さすがに手が荒れていて,痛くはないのですが,何か所も薄皮がめくれています。とくに,風呂上がりなど目立ちます。この程度の手荒れは,皮膚科の医者のお世話になることはなく,数日で治っています。

 ところが,ずっと,手が荒れているこどもがいます。冬は,手がカサカサになっていて,ひび割れて血がでているこどももいます。もちろん,同じような大人もいます。ご存知の方も多いかと思いますが,手洗い強迫とか,洗浄強迫といって,手を洗わないといられないことがあります。ガマンできずに,手を頻繁に洗ってしまいます。手が汚れていることが,本人とっては恐怖になっているのですね。コロナウィルスもそうですが,見えない身の回りの汚れが,気になってしかたがないのです。

 似たようなことでは,外出時に,家の施錠をしてきたか,ガス栓は大丈夫かと,気になってしまう確認強迫があります。あと,よく知られている強迫症状としては,狭いところが苦手な閉所恐怖や,高いところが苦手な高所恐怖などがあります。

 気にしなくてもいいのに,そのことにとらわれて,過度に心配すること(強迫観念),過度に行動(強迫行為)をすることで,日常生活に支障をきたして,身動きが取れなくなってくることがあります。この症状を強迫性障害といいます。外でも家でもものが触れないとか,家のガス栓を閉めたか心配で,外出ができなくなるといってことが起こってきます。
 
 器質的なこともあるかもしれませんが,過剰なストレスがきっかけとなります。過去のトラウマをかばうかのように,強迫性障害が起こってくることもあります。対処法としては,投薬やカウンセリングなどがあります。

 コロナ禍での学校や店舗の消毒液での洗浄の奨励は,頻繁に手を洗うこどもにとっては,受け入れやすく,安心の材料になることでしょう。「手を洗ってはいけない。」とか,「周りの汚れを気にしてはいけない。」といったことを言われないわけですから,とても心が安らぎます。そんなこどもにとっては,居心地のいい世の中になっています。

 ちょっとした手洗いや施錠などの不安は,経験したことがある人も多いことでしょう。普通に生活ができていれば,それでいいのです。過剰な心配が,強迫観念や強迫行為を作ってしまうこともあります。

親の相談室(こどもが話を聞いてくれないという)2020.8.5


 どうすれば,上手にこどもの話を聞けるのでしょうか。今日は,「傾聴」をテーマに考えていきたいと思っています。こどもが「私の気持ちを分かってくれていない。」「話を全然聞いてくれない。」という。
 親は親で,「あなたの気持ちを考えて,一生懸命に聞いているのにどうして,そんなことをいうの。」という思いを持ちます。人の話を聞くことは,やはり難しいことですね。

 各都道府県や市町村では,先生方を対象に,教育相談の研修会も多く開催しています。その中心は,生徒の理解と対応となります。そのために,関係づくりのための傾聴実習が行われることがあります。もともと,学校の先生の仕事は,話すことが中心ですが,聞くことも大事となります。また,生徒からの相談の大部分は,「思いを聞いて欲しい。」そのものなのです。

 「傾聴」を理解するために,「下手な聞き方」を紹介します。
 下記の「下手な聞き方」は,研修会で紹介していたことなのですが,親である保護者の方々にも,とても役立つと思っています。もちろん,日々の人間関係でも,役に立ちます。
 「下手な聞き方」(マートン.C.ハンブリー)
 1.私が言おうとしていること,考えている流れを妨害する人
 2.問題をそらしてしまう人
 3.私がまだ喋っているのに,もう自分の答えを考えている人
 4.答えを一緒に考えてくれず,すぐ助言する人
 5.私も皆と一緒だといって,話を一般化する人
 6.すぐに結論を出し,私を邪魔する人
 7.私の問題を決めつけようとする人
 8.理性的にも感情的にも,今ある状況の外に立とうとする人
 9.手足や姿勢の位置を頻繁に変える人
 10.「私もそうだったのよ!」という人
 11.沈黙や間をあけてはいけないと思っている人
 12.私の質問を避ける人
 どれか思いあたる項目がありましたか。「下手な聞き方」を意識することで,「こどもが話を聞いてくれないという。」ことが少なくなればいいですね。
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